多くの人が憩う東京都心の明治神宮外苑で、なぜ森に手を加え、超高層ビルを建てるのか――。約150人の地元住民が17日の説明会に集まり、ビル事業で生まれる収益の使途などを質問した。事業者側も回答したが、既出の内容が多く、取材に応じた参加住民からは不満が漏れた。
計画されている再開発事業は、神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を変えながら建て替えるほか、超高層ビル2棟も新築するなどの内容。
不動産大手・三井不動産、宗教法人・明治神宮、独立行政法人・日本スポーツ振興センター、商社大手・伊藤忠商事の4者が進める。3月に工事が始まり、2036年の完成を予定している。
開発エリア内で837本を植樹する一方、700本以上の高木を伐採する計画が、環境破壊や景観悪化だと懸念されている。中止を求めるネット署名は21万筆超。強まる批判を受けて、事業者側は着工後初めて、近隣住民と事業者に限った説明会を17日から始めた。
「なぜ高層ビルを建てる必要があるのか疑問に思って参加したが、明確な理由は返ってこず、うまくかわされた感じ。不信感が大きくなった」。出席した50代の女性会社員は憤った。
説明会ではビル建設の理由を問う質問が続いた。事業者側は「緑とスポーツを守るために、ある程度の高度利用が必要」「圧迫感を与えないよう、景観にも配慮する」などと説明した。
女性は、事業中止を求めるネット署名が多数に上っていることもあり、「近隣住民以外も参加できる、対面での説明会を再度開くべきだ」とも話した。説明会の参加資格者は、「会場の限界がある」(再開発事業者)として再開発エリアから380メートルの居住者などに限られた。それ以外の人への説明は、「ウェブサイトで説明用動画を流し、質問も受け付けている」というのが事業者側の姿勢だ。
「煮えきらない回答ばかり。私たちが感じている疑問は解消されるのか。今日は裏切られた気持ちだ」。別の60代女性は強い言葉で語った。外苑の代表的景観となっているイチョウ並木近くに住んでいるという。
高層ビルによる「ビル風」や、来訪者による騒音が心配。説明会でもこの点について質問があり、事業者側は「防風壁や防風林で、懸念がないようにする」「(騒音に関する)自主規制のルールを今以上に周知徹底する」などと回答した。
ただ、女性は「(事業者側が…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル